初診料を設定しない

治療院は開業さえしてしまえば仕入れも在庫も要らず、毎月ギリギリの生活でも何とか成り立ってしまう所が曲者で過当競争の割には簡単に潰れてしまわない代わりに、何年たっても生活に余裕が生まれず開業資金の回収はできないし、かと言って一度事業主になったせいで簡単には転職もできなくなってしまう悲惨な職業とは知らずに参入してしまうせいなのか、何とかして増収の方法を探り、結果として初診料の設定に行き着くのかも知れない。

初診料の根拠として一般的に説明されるのが問診、検査、カルテやカードの作成料などだが、自分の仕事上で必要な作業の手間賃が理由となれば最早「言い訳」としか思えず、もっと説得力のある理由を挙げて欲しいのだが・・・

初診料がある場合

少なくとも2~3回は施術してみないと効果を出せないという前提と意識から始まる施術が積極的である筈がないため最初の施術は殆ど失敗し成功経験を積めないせいで施術に自信が持てなくなって、当たり障りのない紋切り型かどんな患者にも同じ通り一遍の施術しかできなくなる。

患者は初回施術で効果を実感できなくても初診料を払っているせいで次回からの料金が割安と感じ数回は通わされるため思った程の効果がなかった場合には金銭的な無駄だけでなく時間的な無駄まで強いられる。

初診料がない場合

初回施術で効果を納得させられなければ次回に期待はされず二回目はないというプレッシャーから施術に対する真剣さが生じ、集中力が技術を高め効果が上がると自信がつき更に積極的な方法を試みて常に技術が刷新される。

患者は初回施術で効果を実感できなければ次は止めるので実損は施術料だけで済み、 すぐに新たな治療院を探す機会ができる。

最近では初診料を無料にすると謳う治療院が増えて来て、そのこと自体は珍しいことではなくなっているようだが、何故初診料を無料にする必要があるのかと思えば、30年前からは考えられない激しい過当競争で初診料を無料にすると謳わなければ集客が難しくなったために料金に初診料を上乗せできないだけのことで、結局なくてもいいなら最初から根拠のないことを証明しているようなものではないか。

広告宣伝をしない

「売り上げの80%は全顧客の20%によって齎(もたら)される」
とするパレートの法則に治療院を当てはめてみると、施術師の技術に満足している数十人のファンが繰り返し来院して八割の売り上げを形成し、残り二割はその他の顧客(新規)から構成される形が安定した経営状態といえる。

新規開業店の存在を知らせるために宣伝は必要だが、宣伝によって来院した顧客の何割かが確実にリピーターにならない限り、パレートの法則に見られる安定した経営状態にはならないから、延々と宣伝を続ける事は常連を増やせない経営不振の治療院ですと暴露宣伝をしているようなものだろう。

広告・宣伝をする場合

一般的に高額の宣伝費をかけたとしても獲得できる新規顧客数は微々たる物でしかなく、その僅かな顧客に対して施術師が全力を尽くし、極めて短期間に施術不要と判断できる所まで治してしまえば、利益どころか宣伝費の回収もできなくなる訳だから、せっかく獲得できた顧客を出来る限り引き伸ばして通わせ、少しでも多くの収益を上げようと考えるのは当然の事と言える。

治せる技術があったとしても手抜きの施術で何度も通わせようと考えた瞬間から治せない施術師への成長階段(?)を上り始めるフィードバックループに捕まって、三年もすれば誤魔化すことだけが上手くなり治療なのか商売なのか訳の分らない職業になってしまう。

広告・宣伝しない場合

「満足した客は最高のセールスマン」という言葉どおり新規顧客の全てが満足する施術をすれば黙っていても人は集まり敢えて経費をかけてまで宣伝する必要はないのだから 広告・宣伝をしないメリットは何とかしてそれを実現しようとする意思が強固になり、そのための技術や方法を編み出す事ができる。

現実に全ての人を満足させる施術は不可能であっても可能にしてみようという意識と最初から出来ないと考えて始める施術では結果に雲泥の差が生まれ 前者には奇跡的とも思える効果が続出するだけでなく思いも依らない閃きや発想・発見の経験が積み重なって新技術が確立されていく。

回数券を売らない

治療院で回数券を売るのは経営難や宣伝費の増大から手っ取り早く収入を得たいという切実な理由からであって、顧客の経済的負担軽減のためや施術の継続性が必要な慢性痛を治す目的からなどではない。

負担軽減や継続が本当の目的なら一度に数万円も請求せずに回数券と同じ割合の一割を毎回割り引いてくれた方がよっぽど負担が少なく済む筈なのにそれをしようとしない回数券の販売は、まとまった収入が欲しいということ以外には考えられない。

回数券を売る場合

施術の報酬としてではなく通常料金の数倍が回数券を売って一度に手に入ると治療師は緊張感がなくなり、回数券を買わなかった者より買った者の扱いが逆にぞんざいになってしまう。

その理由は釣った魚には餌をやらない例えどおり、得る物がなくなった患者には真剣な施術をする気が起きなくなってしまうだけでなく毎回努力して効果を上げても先に受け取った金額が増える訳ではないので報酬としての満足感がなく時間潰しのだらだら施術に陥ってしまうから。

回数券には止めたくなったらいつでも止められるという選択肢がなく、途中で止めても払い戻しがないため患者にとって利益は何もない。

回数券を売らない場合

一回、一回の施術を真剣勝負と考えて緊張感を維持し、初回施術だけで患者を納得させる効果を出そうとするから工夫や努力に余念がなくなるが、効果を出せなければ技術のない未熟者と見做され、経営困難に陥るプレッシャーがあるから手は抜けないし施術の報酬が毎回あるから真剣にもなれる。

僅か10%OFFの回数券が損か得か相手の立場で考えれば、施術師の心理ぐらいは簡単に分りそうなものを悲しい事に痛みを抱え、弱みを持ってしまった人間は正常な判断を狂わされ、そこにつけ込まれると言えば語弊があるかも知れないが施術師も又哀れなことに、手間と経費をかけてまで作った回数券のために、モチベーションを下げ技術も衰えて行くことを時間の経過と共に何時(いつ)か思い知らされることになる・・・恐ろしき哉。

個人情報は不要

患者は治療院に行けば必ず最初に住所や氏名その他を書かされる筈だが、初回だけで二度と行かない場合や、いつまでも通い続けるとは限らない場合でも個人情報を残して来る事に不満や危険を感じないのだろうか。

信頼関係だからと言われても初対面の施術師を施術も受けていない段階で信頼できる事の方が不思議と言うものだが・・

施術師が患者に信頼して欲しいと思うなら最低でも患者が求めている効果を見せた上で自分は信頼に足る人物ですから、顧客管理に必要ですので個人情報をお教えくださいとお願いするのが筋だろうと思うが有無を言わさず名前を書けと求める施術師は自分を何様だと思っているのかと聞いてみたい。

このような治療院での理不尽な要求に対抗するには偽名、偽住所、にせ電話番号を書いて置き、施術師を信用できると思えるまで信用しないぐらいの用心が必要ではないだろうか。

当院は1983年の開業時から姓を聞く以外にプライバシーに関することは一切尋ねない方針だが、爾来一度も支障がなかった事を考えてみても治療院の顧客管理は個人識別さえできれば可能だから電話番号と氏名が分かれば充分だろう。

個人情報を残す

初回だけの客や暫らく来院のない客に再来院を促すためにダイレクトメールやE-MAIL年賀状、暑中見舞いなどを送ったり診察券、予約カードの類を作成して次回来院を勧め客離れを防ごうとする。

施術が必要かどうかは自分で分かるのだから来院がないのは施術師の技量が見限られたに決まっていて、そこまでしなければならないほど客離れが多いなら、問題は他にあると考えた方がよさそうなのだが・・

個人情報を残さない

診察券、予約カードの類を作成せず次回の予約を強要しないため施術が必要かどうかの判断は患者に任せる事になる。

初回の施術後、数日過ごしてみて体に何の変化も起きず効果を実感できないようなら次回の予約をしないか、もう一度だけ試してみるかは本人次第だから治療院は技術を高めるために努力せざるを得ないメリットになる。

住所(個人情報)を知らないのでダイレクトメールやE-MAIL、年賀状、暑中見舞いなどを出さないため手間や経費がかからず両者に煩わしさがなくなる。